本校研究室と(国)物質・材料研究機構との共同研究の成果が国際専門誌(materials)に掲載されました

   本校創造工学科 電気・電子コースの正村亮講師と、(国)物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点の松田翔一主任研究員、玉手亮多独立研究者との共同研究の成果が、国際専門誌
「materials」に掲載されました。

「Lithium-Ion-Conducting Ceramics-Coated Separator for Stable Operation of Lithium Metal-Based Rechargeable Batteries」

Ryo Shomura, Ryota Tamate* and Shoichi Matsuda*

 本論文は、その分野に大きな影響を与える可能性のある最先端の研究として、「materials」を刊行する出版社が選出する「Feature Paper」に選ばれました。「Feature Paper」に選出される論文は概ね2.5%程度であることから、注目度の高さがうかがえます。

 論文は以下から無料でダウンロードできます。
 https://www.mdpi.com/1996-1944/15/1/322

概要
 リチウム金属負極は、現行のリチウムイオン電池で用いられているグラファイトと比較して10倍以上の理論容量を有し、リチウム電池の小型化・軽量化といった面で究極の負極材料と期待され長年研究されてきました。しかしながらリチウム金属は反応性が非常に高く、リチウムデンドライトが生成され安定性を欠くといった多くの問題点があります。リチウムデンドライトは成長すると、やがてセパレータを突き破り対極(正極)まで到達することで電極の短絡(ショート)を起こし、これが発火や爆発といった事故につながることから、実用化には至っておりません。
 本研究では、リチウム金属と電解質の間の界面反応の安定性を向上させる目的で、簡単で大面積への塗布も可能なブレードコーティング法を使用して、リチウムイオン伝導セラミックフィラーを含む有機/無機複合固体電解質層で市販のポリエチレン膜セパレータをコーティングしました。 コーティングされたセパレータにより、リチウム金属と電解質の間の界面抵抗の上昇が抑制され、界面でのリチウムの溶解/析出反応の繰り返しにおける安定性が向上しました。これらの結果は、リチウムデンドライトの生成が抑制されていることも示唆するものです。
 さらに、リチウム空気電池の放電/充電サイクル性能に、コーティング層がどのような影響を及ぼすか調査した結果、従来のセルと比較して電池の放電/充電サイクルの安定性向上に寄与したことが確認されました。
 今回、論文で報告した材料は、現行のリチウムイオン電池を凌駕する次世代二次電池の創成に向け鍵となる素材であり、実用化が期待されます。