卒業生リレーエッセイ【第7回】

社会の第一線で活躍中の本校卒業生からいただいたメッセージをリレー形式で紹介します。

 

第7回 伊 藤   敏  氏

(電気工学科・第1期卒(1968年) 東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科(元:(株)日立製作所ストレージシステム事業部))

『イノベーションとマネジメント』

 イノベーションは技術革新と訳されることが多いが、これは正しくない。そもそも技術に限るものでも、また革新すれば事足りるものでもない。経済的な成功を伴う改変行為*1とする定義が相応しい。高い確率でこれを実現するにはマネジメントが必須なのである。MOT*2とも呼ばれる学際的なこの分野は、米国に20年以上遅れて、2002年以降に漸く日本でも大学院の修学コースができた。
 私がMOT研究を志したのは、高専を出て日立に入社し、長年に亘って製品開発に携わった最晩年のことである。揺籃期のコンピュータ開発では、専門分野に依らず何でも自分で挑戦することが求められ、高専での履修は正に当を得たものであった。企業人としての晩年を迎えたとき、それまでの現場に基づく実践的知見を、理論的な視点から体系化できないかとの思いに至った。大学院を受験したところ運よく合格出来たので退職と同時に入学。後期課程ではETH(スイス連邦工科大)への留学など研究を進め、昨年に博士(技術経営)の学位を得て修了した。
 現在は、幾許かでも社会貢献を果たせればとの思いから、今年発足した産業間協創システム研究会での教育研究支援を担い、各業種の企業から派遣された研究員達と活動を共にしている。MOT履修はリカレント教育*3としても有効であり、今後を担う後輩の皆さんに是非一考をお奨めしたい。

*1:後藤晃(2000)『イノベーションと日本経済』岩波新書
*2:Management Of Technology 技術経営
*3:社会人が必要に応じて学校に戻って再教育を受ける循環・反復型の教育

ETH研究室にて

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