卒業生リレーエッセイ【第28回】

社会の第一線で活躍中の本校卒業生からいただいたメッセージをリレー形式で紹介します。

 

第28回 新 関 久 一  氏

(機械工学科・第8期卒(1975年) 山形大学大学院理工学研究科教授)

『めぐりあわせ』

 高専に入学したのは大学紛争が収束しつつあった昭和45年のことである。卒業時にはオイルショックの余波が色濃く残っていた。私は某電力会社の就職試験を受けたが失敗、それでも必ず就職しなければという執着心はなくショックは受けなかった。自分で何をやりたいのかもわからないモラトリアム人間の典型だった。進学も考えたが、結局ぎりぎりで間に合った公務員試験を受け、開設間もない山形大学医学部の技術職員として拾われた。医学と工学は全く異なるものと思っていたが、生体工学という分野があることを知り、奇しくも生体工学を専門とするM教授の下で働くことになった。M教授は自分にも他人にも厳しい方であり、徹底的にしごかれた。自分の知識のなさを痛感し大学に編入した。山大の情報工学科に生体情報を研究する講座があり、主宰していたのは偶然にもM教授のお弟子さんだった。一度社会人となってからの学生生活は自分でも驚くほど充実感があり、新鮮で、新しい知識を得るのに燃えていた。振り返れば、幾度か転機があったが、長期的なビジョンはなく、その時々で偶然の出会いが自分を駆り立てた。あのとき就職がすんなり決まっていたら今の自分はいない。高専で周りの人々に支えられて貴重な5年間を過ごし、三十路を越えてから教壇に立つ身となった。日々学生の成長を目の当たりにしながら庄内の地に思いを馳せ、自然豊かな鶴岡で多くの有為な高専生が育っていくことを願っている。

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