乾かず、高強度なゲルを利用した低摩擦材料を開発しました

二種類のポリマー※1を組み合わせたポリマーゲル※2に難揮発性のイオン液体※3を組み込むことで、しなやかで強い低摩擦材料として機能

鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 化学コースの荒船博之准教授(筆頭著者)、本間彩夏研究員、森永隆志准教授、上條利夫准教授、佐藤貴哉教授(責任著者)らはダブルネットワークゲルとイオン液体を組み合わせることで高温・真空下でも乾かない潤滑ゲルシステムを開発することに成功しました。この研究成果はドイツのWiley-VCH社が発行する界面化学の学術論文雑誌Advanced Materials Interfacesに05月09日付けで掲載され、同雑誌の表紙(バックカバー)にも採用されました。本研究は山形大学の古川研究室と連携して行われたものです。

(論文は下記URLに掲載されており、概要を閲覧できます)

論文タイトル:「Highly robust and low frictional double network ion gel」

全著者:Hiroyuki Arafune, Saika Honma, Takashi Morinaga, Toshio Kamijo, Miki Miura, Hidemitsu Furukawa and Takaya Sato

URL http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/admi.201700074/full (論文)

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/admi.201770045/full (バックカバー)

朝起きてから顔を洗い、歯を磨き、食事をするといった日常動作の中で私たちは知らず知らず摩擦を活用しています。取るに足らない現象にも思える摩擦ですが機械故障の75%、あるいはエンジンの力学損失の30%はこの摩擦に起因すると言われています。したがって長寿命かつ省エネルギーの機械システムを実現する上で低摩擦材料の開発は重要な課題です。

数ある材料の中でも、私たちの体の中にある関節は10-2~10-3オーダーというスケートリンクほど低い摩擦係数を数十年、交換することなく機能し続ける身近な低摩擦材料です。関節はコラーゲン骨格と潤滑液から構成されるゲルのような構造をとっており、古くからゲルをベースとした低摩擦材料の開発が行われてきました。中でも二種のポリマーを組み合わせることで形成されるダブルネットワークゲル(DNゲル)は、ゴムのような耐久性とスケートリンクのような低摩擦を兼ね備えることから人工関節をはじめとする様々な低摩擦材料への応用が期待されています。しかしながら、DNゲルは水を媒体とするゲル(ハイドロゲル)であることから乾燥に弱く、高温や真空または長時間使用といった工業利用には不向きといった課題がありました。

本研究では高い熱安定性と難揮発性をもつイオン液体に着目し、これと相性のいいポリマーであるイオン液体ポリマーおよびポリメチルメタクリレートを骨格とすることで、イオン液体を媒体とした新しいDNゲル(DNイオンゲル)を合成しました。DNイオンゲルは大部分が液体(75wt%)である一方で高い圧縮強度(30 MPa)を有し、高真空中(2×10-4 Pa)でも乾燥することなく、また80℃の加熱条件下でも摩擦係数0.007の安定な潤滑表面を維持することがわかりました。開発したDNイオンゲルは従来のハイドロゲルでは困難な高温・真空下でも低摩擦ゲルとして機能することから、シール材や軸受に適用することで機械システムの長寿命・省エネルギー化に貢献することが期待され、企業からも問い合わせが続いています。

本研究は大学発GRENE事業先進環境材料分野「グリーントライボ・イノベーション・ネットワーク」の支援を受けて行われたものです。

用語解説:

※1 ポリマー:分子同士が鎖状や網状につながっていくことで形成される大きな分子のこと。たとえばビニル袋(ポリエチレン)やペットボトル(ポリエチレンテレフタレート)など

※2 ポリマーゲル:三次元状の網目構造をとるポリマーが大量に溶媒を含んだ構造体のこと。たとえばコンタクトレンズやゼリーなど。

※3 イオン液体:陽イオンと陰イオンのみから構成される、液体の塩。食卓でおなじみの塩化ナトリウムは800℃以上加熱しないと液体にならないのに対し、イオン液体は一般に100℃以下で液体になる。

 

学術論文雑誌(Advanced Materials Interfaces)表紙
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