卒業生リレーエッセイ【第21回】

社会の第一線で活躍中の本校卒業生からいただいたメッセージをリレー形式で紹介します。

 

第21回 貴 家 仁 志  氏

(電気工学科・第11期卒(1978年) 首都大学東京教授)

『月山に抱かれて』

 鶴岡高専創立50周年を心からお祝い申し上げます。私の実家は鶴岡市加茂にあります。高専卒業後は、一期生として長岡技術科学大学に入学し、修士課程修了の後に、首都大学東京(当時東京都立大学)に勤務致しました。
 高専時代を振り返ると、寮生活と、東京にあったKDDIでの実務訓練体験が強く思い出されます。親元を離れ、大きく違う環境を体験したことによって、自分自身を客観的に見つめることの大切さを知りました。また在学時に芥川賞作品の「月山」という小説に出会いました。この作品は、ふもとから見ていた月山を、月山に登り近づくと見失う、という内容で、生と死の世界を対比しています。作者の森敦さんの弟、森碩先生が高専に着任されていたこともあり、何度かお兄さんや小説月山のお話を伺うことができました。真実を見つめることの多様性や困難さを知るきっかけとなりました。
 現在、私は「信号処理」という分野で教育及び研究活動を行っています。最近は、学会での活動も増えており、国内では電子情報通信学会(会員数約34,000)の理事、米国電気電子学会(会員数約400,000)では信号処理分野の日本代表を務めています。またアジア太平洋・信号情報処理学会という学会を海外の研究者と共に創設し、副会長を務めています。海外での活動を通して、自分の原点が、加茂、あるいは鶴岡、庄内、日本、アジアという畑でそれぞれ芽吹いていたことを知ることができました。

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